「前にも言ったよね?」
「何度言えば分かるの?聞いてないからまた同じミスをするんじゃない!」
こんな言葉で同じミスを繰り返す部下を叱責した経験はありませんか?

逆効果を生んでいるかもしれない!

「背水の陣」ではありませんが、危機感を持たせることによって部下の緊張感を高めて、ミスを繰り返さないようにしているつもりが返って逆効果を生んでいるとあなたは気づいているでしょうか?

ミスを繰り返す心理として、まずは日ごろから
そういう部下の方は「緊張状態」にあると考えられます。

・ミスをしたらまた怒られる
・怒られるのは恥ずかしい、情けない
・ミスをしたら迷惑をかける
・出来ないやつだと思われたくない

そんな思いで働いていると、不安を恐れるあまり緊張感が高い状態になります。いわばストレスフルの状態ですね。
そういう状態に置かれてよいパフォーマンスが出来る方も中にはいらっしゃいますが、ほとんどの方はミスを恐れるあまりパフォーマンスが小さくなり、よい結果を生まないことがほとんどです。

日ごろから緊張状態が強い部下だと、ミスをした時点ですでに緊張感がマックスまで高まってしまい、上司に報告するときにはパニック状態に陥っている可能性もあります。

そんなときには

そういう時は「怒っているわけじゃないから、状況を説明して?と優しく言っても、上司のいう事なんか絶対に信じてもらえないんですよ。
何故なら、ミスをした時点で本人が一番傷つき、一番自分を責めていますから「怒ってないから」と言われても

「そんなわけない、自分は怒られて当然のことをしたのだから!」

と激しく思い込んでいる状態なので、「怒ってない」なんて嘘だと思われてしまうんですね。

かといって、この緊張+パニック状態の時に「次はこうして、ああして」などの改善策を伝えても心と頭に余裕がない状態で聞いていますから、記憶に残しにくいんですよね。

そんな馬鹿な!と思われるかも知れませんが、例えるなら、彼らのその時の心理状態は、あなたが東京タワーのてっぺんから命綱なしで綱渡りを強要されている状況で、失敗したら死んじゃうからなんとか気持ちを落ち着かせようと必死になっているまさにその最中に

「体幹意識して背筋を伸ばして15センチずつ進むんだよ!」
「右に傾いてるぞ!左に棒を傾けてバランスを取ればうまく行くよ!」
「綱と足の接地面を感じて滑らすように足を交互に出すんだよ!」

と一気に言われても全然頭に入ってこないですよね?
ちょっと大げさに聞こえるかも知れませんが、部下にとって上司であるあなたに無能だと思われることは、社内における存在価値を脅かすくらいの脅威だと感じる方もいらっしゃるので、このくらいの心理状態と思っておいても損はないと思います。

では、どうすれば?

ではミスをビクビクしながら報告してきた部下に叱ってもダメ、怒ってないよとアピールしてもダメなら何をすればよいのでしょう?

まず最初にやることは、ずばり「気持ちに寄り添う」ことです。

先ほども記述したように、ミスをした段階で部下は自分を十分に恥じて、責めています。
その状態で上司に報告に行く時には、「警察に出頭する犯人」のような覚悟を持って報告へ行っていますので、まずはその行動に対して

「素直に報告してくれて有難う。これだけでもすごい勇気が必要だったよね」

と行動を起こした「気持ち」に寄り添った言葉をかけるだけで、部下の緊張を下げることが出来ます。自分の勇気を理解してくれた、ミスはしたけれど素直に報告した行動は認めて貰えた…その「分かってもらえた」という安心感は上司に対する「信頼」に繋がります。

「信頼」がある人の言葉は聴こう、と思うのが人の性質ですから、この一言で「上司の話を聴く余裕」が生まれやすくなります。

また、極度の緊張状態だった人はこの時点で泣き出すこともあります。
是非ここでは
「仕事中に泣くな!」と押さえつけたり
「泣かれても困るんだよねぇ」と蔑んだりしないでください。

安心感から感情が一気に溢れてしまっているだけなので、是非涙が一通り止むのを待ってあげてください。すると自分から「自分が情けない」「また同じミスをして恥ずかしい」などの気持ちを語ってくれることがほとんどです。

この時も「そっか、そっか」と相槌を打ちながら気持ちが落ち着くのをじっと待つことで、部下は勝手に自分の気持ちに整理をつけていきます。

気持ちの整理がつかない間は、人間は思考が働きにくいですからまずは気持ちを整理させ、落ち着かせることが大切です。

そのためにはまず「気持ちに寄り添う」という行為が同じミスを繰り返さない人間に育て上げる上で非常に重要な最初のポイントになりますので是非ご活用下さい。

次回のコラムでは
気持ちが落ち着いた部下を、ミスを再発させない考え方に
育てていく方法を紹介していきます。